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本書は、中国四大奇書の一つである『水滸伝』を、大正・昭和期を代表する文豪・佐藤春夫が現代語に翻訳した全12巻のうちの第5巻です。物語は北宋末期の中国を舞台に、不正や腐敗に追われた108人の好漢が梁山泊に集結し、世に反旗を翻す様を描きます。この第5巻「情縁木魚の巻」では、特に人間関係の機微や愛憎が色濃く描かれる部分に焦点が当てられています。具体的には、石秀と楊雄、そしてその妻・潘巧雲を巡る三角関係の悲劇や、盗みの名人・時遷の活躍などが中心となります。佐藤春夫の流麗な筆致により、豪快な物語の中に登場人物たちの細やかな心理描写が織り込まれた、文学性の高い翻訳作品となっています。
本書が発売された1953年当時、日本は戦後の混乱期を脱し、人々が安定した生活の中で娯楽や教養を求め始めた時代でした。ラジオや映画と並び、読書は主要なエンターテイメントであり、特に壮大なスケールの物語文学への渇望が強かったと考えられます。そのような中で、すでに文壇の大家として絶大な知名度と信頼を得ていた佐藤春夫が、中国古典の傑作『水滸伝』の「新訳」を手掛けるという企画は、読書界にとって大きな出来事でした。単なる翻訳ではなく、著名な小説家による文学作品としての再創造という期待感が、読者の強い購買意欲を喚起したと推測されます。他の学術的な翻訳とは一線を画す、物語としての面白さと美しい日本語を両立させた点が、当時の読者ニーズに合致し、多くの支持を集めた大きな要因と言えるでしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1953年)
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