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本書は、二・二六事件の当事者の一人である斎藤瀏が、事件の背景から結末、そして自身の獄中生活までを綴った回想録です。著者は、決起した青年将校たちの思想的指導者と見なされ、事件後に禁固刑を受けた人物です。そのため本書は、単なる事件の客観的記録ではなく、将校たちの純粋な憂国の念への共感、決起という行動への複雑な思い、そして自らの運命への省察が色濃く反映された、極めて個人的な視点から描かれています。事件に至るまでの思想的潮流、事件当日の動き、軍法会議の様子、そして獄中で交わされた書簡などが、著者自身の体験を通して生々しく記述されており、歴史的事件の内面に迫る一次資料としての側面も持っています。
本書が発売された1951年は、敗戦から6年が経過し、サンフランシスコ講和条約を控えて占領期が終焉に向かう、日本の転換点でした。この時期、多くの国民が「なぜ日本は戦争へと突き進んだのか」という根源的な問いを抱き始めており、その象徴的事件である二・二六事件の真相を知りたいという強いニーズが存在したと考えられます。GHQによる言論統制が緩和され、これまで語られなかった当事者の証言が求められる中で、本書は登場しました。著者の斎藤瀏は、単なる評論家ではなく、決起将校の指導者と見なされ投獄された張本人です。この圧倒的な当事者性を持つ人物による「最初の本格的な手記」という点が、他の歴史解説書とは一線を画す決定的な差別化要因となったでしょう。歴史の空白を埋める一次情報としての価値と、時代の渦に翻弄された人間のドラマ性が、当時の読者の知的好奇心と渇望を捉え、大きな注目を集めたと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?