📬 ロングセラー通信
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本書は、医学者である著者が「食」と「性」という、人間の生物学的な根源欲求を切り口にして人類史、特に日本史を再解釈する歴史評論です。従来の政治史や英雄史観とは一線を画し、国家やイデオロギーではなく、人々の身体感覚や生活習慣が文化や社会をいかに形成してきたかを論じます。具体的には、日本における肉食のタブーの起源、婚姻制度の変遷、性の風俗史などを、医学的知見と独自の史料解釈を交えて探求していきます。歴史上の偉人ではなく、名もなき民衆の日常的な営みに着目し、そこから壮大な文明論へと展開させる構成が特徴です。あくまで事実の列挙ではなく、大胆な仮説を通じて歴史のダイナミズムを描き出すことを目的とした一冊といえます。
本書が1951年という時代に広く受け入れられた背景には、敗戦による価値観の転換が大きく影響していると考えられます。戦前の皇国史観が否定され、多くの人々が「日本とは何か」「人間とは何か」という根源的な問いを抱えていた時代でした。そのような中で、国家や天皇といった権威的な視点ではなく、「食と性」という万人に共通する生々しいテーマから歴史を語る本書のアプローチは、極めて斬新で魅力的に映ったと推測されます。また、戦時中の厳格な道徳観からの解放という社会的な雰囲気も、これまで公然と語られることの少なかった「性」を科学のメスで解き明かす本書への関心を高めた要因でしょう。アカデミズムの堅苦しい歴史書とも、特定のイデオロギーに偏った史観とも異なる、医学者という理系の専門家が語るユニークな歴史観が、知的好奇心旺盛な読者層の心を掴み、ベストセラーへと繋がったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
