📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、歴史学者・坂本太郎による日本通史の概説書です。上巻では、日本の黎明期である原始・古代から鎌倉時代の終わりまでを扱います。内容は政治史を主軸としながらも、社会経済史や文化史の視点も織り交ぜ、各時代の全体像を体系的に捉えることを目指しています。著者は実証史学の立場から、史料に基づいた客観的な記述を徹底しており、特定のイデオロギーや歴史観に依拠しない中立的な姿勢を貫いています。学術的な正確性を担保しつつも、平易で簡潔な文体で書かれており、大学の教科書や一般の教養書として、日本史の基本的な流れと構造を学ぶための入門書としての役割を担っています。
本書が発売された1950年頃に売れた理由は、戦後の混乱期における「信頼できる知の基準」への渇望に応えた点にあると考えられます。
当時は敗戦から数年が経過し、戦前の皇国史観が否定される一方で、新たな歴史観が定まっていない時代でした。多くの人々が、イデオロギーに汚染されていない客観的な自国の歴史を学び直したいという強いニーズを持っていました。そのような状況下で、東京大学教授という最高の学術的権威を持つ坂本太郎氏が、史料に基づいて淡々と事実を記述する実証史学のスタイルで本書を著したことは、大きな意味を持ちました。
同時期に登場した他の歴史書が、マルクス主義史観など特定の立場を鮮明にすることもあったのに対し、本書の「非イデオロギー性」は際立っていました。この学術的な権威と中立性の両立が、新しい時代の教養として日本史を学びたい学生や知識人層に強く支持され、安心して手に取れる「標準テキスト」としての地位を確立する要因になったと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?
