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本書は、19世紀ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェの主著の一つ『Die fröhliche Wissenschaft』を日本語訳し、全集の第6巻として刊行した書籍です。原著は、詩と散文が混在するアフォリズム(断章)形式で構成されており、体系的な論文とは一線を画します。「神は死んだ」という有名な言葉が初めて登場する書としても知られています。内容は、従来の道徳、宗教、真理といった西洋哲学の根幹をなす概念を徹底的に問い直し、固定観念からの解放と、自らの価値を創造して生きる「超人」思想の萌芽が示されています。読者に対して一方的に結論を提示するのではなく、数多くの挑発的な問いを投げかけることで、知的な探求と思索を促すことを目的としています。
本書が発売された1952年頃の日本は、敗戦による価値観の崩壊と、サンフランシスコ講和条約発効による主権回復が重なる、大きな転換期にありました。既存の権威が失墜し、多くの人々、特に知識人や学生層が新たな精神的支柱を模索していた時代です。このような状況下で、ニーチェの「神は死んだ」という言葉に象徴される、既成概念への根本的な懐疑と自己による価値創造の思想は、時代の閉塞感を打ち破るラディカルな処方箋として受け止められたと考えられます。
また、当時ブームとなっていたサルトルらの実存主義の源流としてニーチェが再評価されていたことも追い風となったでしょう。類書である哲学解説書とは異なり、「全集」という形でニーチェの言葉に直接触れられる権威性と本格性が、知的好奇心の高い読者層の需要を的確に捉え、熱狂的に支持される要因になったと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1952年)