📬 ロングセラー通信
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本書は、観賞用植物である「花卉」について、その学術的な知見を体系的に解説した専門書です。個別の植物の栽培方法を詳述するのではなく、花卉の分類、形態、生理、生態、遺伝・育種、栽培環境といった、植物学的な原理原則を網羅的に論じているのが特徴と考えられます。「農学全書」の一冊として、農学を学ぶ学生や研究者、専門的な生産者を主な対象とし、花卉という分野を一つの学問体系として捉えるための理論的枠組みを提供することを目的としています。そのため、内容は基礎理論から応用技術の根幹まで幅広く、専門家が参照する標準的なテキストとしての性格を持っています。
本書が発売された1952年当時、日本は戦後の復興期にあり、社会全体が安定を取り戻しつつありました。食糧増産が最優先課題だった時代から、人々の暮らしに彩りや豊かさを求める機運が生まれ始め、園芸や花卉栽培への関心が高まっていたと考えられます。このような時代背景の中、個人の経験則に頼りがちだった園芸の世界に、科学的・学術的なアプローチを持ち込む本書は画期的でした。
また、農業技術の近代化が国策として推進される中で、大学の農学部や研究機関では体系化された教科書が強く求められていました。類書が個別の栽培技術に関するものが主だったのに対し、本書は「花卉学」の全体像を提示する汎論であったため、教育・研究の現場における「標準テキスト」としての需要を的確に捉えたと推測されます。権威ある「農学全書」シリーズの一冊として刊行されたことも、その信頼性を担保し、専門家や意欲的な生産者が最初に手に取るべき一冊としての地位を確立する上で大きな要因になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
