📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、1935年当時の日本の基幹産業であった蚕糸業、特に協同組合組織である「組合製糸」の動向を分析した専門書です。世界恐慌後の生糸価格暴落や人絹(レーヨン)の台頭といった危機的状況を背景に、零細な養蚕農家が共同で設立・運営した組合製糸の経営実態、直面した課題、そしてその社会的意義について、統計データや実地調査に基づいて論じています。単なる産業報告にとどまらず、農民主体の協同組合という組織が、巨大資本や市場の変動に対してどのように機能し、またどのような限界を抱えていたのかを、経済学および社会学的な視点から深く考察することを目的としています。
本書が発売当初の1935年に売れた理由は、当時の日本が直面していた深刻な経済危機に、具体的かつ専門的な処方箋を提示したからだと考えられます。1929年の世界恐慌に端を発する昭和恐慌により、最大の輸出品であった生糸の価格は暴落し、農村経済は壊滅的な打撃を受けました。蚕糸業の当事者や政策担当者は、この未曾有の危機を乗り越えるための具体的なデータと分析を切実に求めていました。多くの類書が市況報告に留まる中で、本書は「組合製糸」という農民自身による協同組合の取り組みに焦点を当てた点が画期的でした。著者の千石興太郎が産業組合中央会(現・農林中央金庫)の幹部というインサイダーの立場から、詳細な内部データと実践的な視点を提供したことも、単なる評論ではない信頼性を与え、危機打開の糸口を探す読者層に強く訴求したと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?
