📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、歴史学者である上原専禄が西洋中心史観を問い直し、アジア独自の歴史的発展と内面性に光を当てた評論集です。著者は、西洋近代の価値観を普遍的なものと見なす風潮に疑問を呈し、アジアが単なる「後進地域」ではなく、固有の精神性や思考様式を持つ主体的な存在であることを論じます。各章では、歴史、文化、宗教といった多角的な視点から、アジアの人々が培ってきた「こころ」のありようを深く掘り下げています。特定の歴史事実を解説するというよりも、アジアの歴史を静的な対象としてではなく、内側から動的に捉え直すための「視点」そのものを提示することを目的とした一冊と言えるでしょう。
本書が発売された1955年当時に売れた理由は、戦後日本のアイデンティティ模索という時代的要請に応えたからだと考えられます。敗戦から10年が経過し、日本は戦前の「脱亜入欧」思想への反省と、アメリカ主導で流入する西洋文化への違和感という二つの課題に直面していました。人々は、自分たちの歴史的立ち位置を再確認できる新たな指針を求めていたのです。奇しくも同年にはアジア・アフリカ会議(バンドン会議)が開催され、第三世界の連帯が叫ばれるなど、アジアへの関心が高まっていました。このような状況下で、単なる西洋史観の模倣ではない、アジアの内面からその主体性を捉え直そうとする本書の視点は、多くの知識人や学生層の知的好奇心を刺激し、自分たちの根源を問い直すための思想的支柱として受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1955年)