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本書は、伊東岱吉が1957年に発表した、中小企業という存在を体系的に論じた学術書です。単なる経営実務の解説書ではなく、中小企業の定義、その歴史的変遷、日本経済における位置づけ、そして大企業との関係性(いわゆる「二重構造」)といった根源的な問いに、理論的な分析を加えています。中小企業を大企業の未熟な形態としてではなく、独自の論理と課題を持つ存在として捉え、その経営上の特質や政策的課題を包括的に解き明かすことを目的としています。特定の経営手法や解決策を提示するのではなく、中小企業をめぐる様々な問題を理解するための分析的枠組みを提供することに主眼が置かれていると考えられます。
本書が発売された1957年当時は、日本が戦後復興を経て高度経済成長期へと突入する過渡期にあたります。神武景気に象徴される経済拡大の裏側で、大企業と中小企業の格差、いわゆる「経済の二重構造」が社会問題として顕在化し始めた時代でした。このような状況下で、多くの経営者、政策担当者、研究者たちが、中小企業が直面する問題を構造的に理解したいという強いニーズを抱いていたと考えられます。当時、中小企業に関する書籍は個別の事例報告や断片的な評論が主であり、本書のように歴史的・理論的背景から全体像を体系的に解き明かす学術書は稀有な存在でした。学問的な空白地帯に、中小企業論という一つの「分野」を定義するがごとき包括的な理論書が登場したこと、それが当時の知的な渇望に応え、多くの読者を獲得した大きな要因であったと推察されます。
では、なぜ売れ続けたのか?