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(1957年)
本書は、フランス料理の第一人者として知られる大久保恒次が、日本全国の食を求めて旅をした記録を綴った食紀行エッセイです。テーマは、各地に根付く郷土料理や伝統的な食材、そしてそれらを守り育む人々の営みです。著者は西洋料理の専門家という独自の視点から、日本の「うまいもん」の本質に迫ります。単なる料理紹介や味の評価にとどまらず、その食が生まれた歴史的背景や風土、作り手の想いまでを深く掘り下げて描写しています。読者は著者の旅を追体験しながら、日本の食文化の奥深さと多様性を再発見することができます。料理のレシピや店舗情報を提供する実用書ではなく、食を媒介とした文化論であり、人間観察録としての側面が強い作品です。
本書が発売された1957年当時に売れた理由は、高度経済成長期の幕開けという時代背景と、著者が持つ特異な権威性が見事に合致したからだと考えられます。当時の日本は戦後の復興期を終え、人々の生活が豊かになり始めた頃であり、食文化への関心が高まりつつありました。しかし、交通網やメディアは未発達で、多くの人々にとって地方の食文化は未知の領域でした。本書は、そうした「まだ見ぬ日本の味」への憧れや知的好奇心を持つ読者層のニーズを的確に捉えたと推察されます。さらに、単なる紀行文と一線を画したのは、著者がホテルオークラの初代総料理長も務めたフランス料理の大家であった点です。西洋料理の最高権威が、日本の土着の味をどのように評価し、分析するのか。この「外部の専門家による再発見」という視点が、読者に大きな驚きと新鮮さを提供し、他の類書にはない独自の価値を生み出したと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?