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本書はカール・マルクスの主著『資本論』の一部であり、資本主義経済における「資本の流通過程」を主題としています。具体的には、資本が価値を増殖させながら、生産の場と市場をどのように循環するのか、そのメカニズムを解明しようと試みるものです。貨幣として投下された資本が、労働力や生産手段を購入して「生産資本」となり、商品を生産し、それを販売してより多くの貨幣を得る「商品資本」へと姿を変える一連のプロセスを分析します。また、この循環が繰り返される速度(資本の回転)が、利潤率にどのような影響を与えるかを考察し、資本主義経済の動的な側面、つまり絶え間なく運動し続ける資本の姿そのものを理論的に捉えようとする著作です。
本書が発売された1952年頃の日本は、第二次世界大戦後の復興期にあたり、同時に東西冷戦のイデオロギー対立が激化していた時代と考えられます。サンフランシスコ講和条約が発効し、主権を回復した一方で、国内では社会のあり方をめぐる議論が活発化し、特に学生や知識人、労働組合の間でマルクス主義への関心が非常に高まっていました。このような時代背景において、資本主義社会の構造と矛盾を根源から解明しようとする『資本論』は、現状を批判的に分析するための理論的支柱として渇望されていたと推測されます。数多ある解説書ではなく、思想の「原典」に直接触れることへの知的欲求は強く、岩波文庫という権威あるレーベルからの刊行は、その需要に応えるものでした。本書は、戦後の新しい社会を模索する人々の知的な羅針盤として、時代の要請に合致したことで広く受け入れられたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
