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本書は、考古学者である樋口清之が、東京という都市の成り立ちを先史時代から紐解く歴史物語です。タイトルに「五千年」とあるように、有史以前の武蔵野台地の形成や縄文時代の暮らしから筆を起こし、江戸、そして近代東京へと至る悠久の時の流れを追います。単なる年表的な事実の羅列ではなく、「史話」として、地形の変遷や人々の生活文化の移り変わりを物語として生き生きと描き出しているのが特徴です。政治史や事件史 중심がちな歴史書とは一線を画し、我々が暮らす土地そのものが持つ物語を、考古学的な知見に基づいて解き明かす一冊と言えます。
本書が発売された1950年頃は、日本が敗戦から5年を経て、復興の道を歩み始めた時期でした。特に東京は大規模な空襲により物理的にも精神的にも大きな傷を負っており、多くの人々がアイデンティティの拠り所を求めていたと考えられます。このような時代背景において、本書は2つの重要なニーズに応えたのではないでしょうか。第一に、失われた街への郷愁と未来への希望です。戦災で変わり果てた東京の風景の下に、数千年にわたる人々の営みが連綿と続いているという物語は、読者に精神的な安定と時間的な連続性を与えたと推測されます。第二に、戦前の皇国史観とは異なる、より身近で生活に根差した歴史への渇望です。考古学の視点から「土地」と「暮らし」を主役に据えた本書の語り口は、イデオロギーから解放された新しい歴史の捉え方として、当時の知識層や一般読者に新鮮に受け入れられたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
