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本書は、マルクス主義歴史学者の服部之総が、明治時代の思想を分析した論考集です。福沢諭吉、中江兆民、徳富蘇峰といった著名な思想家や、自由民権運動、国粋主義といった思想潮流を主な対象としています。本書の最大の特徴は、単に思想家の言説を時系列で追うのではなく、唯物史観という分析的視座から、それらの思想が当時の社会経済構造、特に資本主義の発展段階とどのように関連し、規定されていたのかを解明しようとする点にあります。具体的な史料に基づいた実証的な分析を通じて、明治という時代の思想的格闘を、その社会的背景とともに立体的に描き出すことを目的としています。
本書が発売された1955年頃は、戦後の民主化が進む中で、日本の近代化の原点である明治時代を批判的に再評価しようとする気運が非常に高まっていた時代と考えられます。特に知識人や学生層の間では、マルクス主義が社会や歴史を科学的に分析する有力な手法として広く受け入れられていました。このような時代背景の中、本書は読者の知的好奇心に強く応えたと推測されます。
本書の独自性は、単なる思想家の列伝や思想の解説に留まらず、唯物史観という明確な分析ツールを用いて、明治の思想を当時の社会経済構造とダイナミックに結びつけた点にありました。福沢諭吉や中江兆民といった思想家が、なぜその時代にそのような思想を形成したのかを、資本主義の発展というマクロな視点から解き明かすアプローチは、当時の読者にとって非常に知的刺激に満ちたものだったでしょう。戦前の弾圧を乗り越えたマルクス主義歴史学の権威である服部之総による著作という点も、その信頼性と価値を高め、当時の学術界や思想界における必読書としての地位を確立した一因と考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1955年)