📬 ロングセラー通信
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本書は、霊長類学者である今西錦司が、生物社会という大きな枠組みの中で人間を捉え直す試みです。サルやハチなどの動物社会に見られる順位制、リーダーの存在、棲み分けといった共通構造を平易に解説し、それを人間の社会と比較検討します。著者は、人間が言語や文化を持つ点で他の動物と一線を画すことを認めながらも、その社会構造の根底には生物として共通の原理が働いていると論じます。特定のイデオロギーや哲学に依拠するのではなく、フィールドワークに基づく客観的な観察から「人間とは何か」という根源的な問いに迫る点が特徴です。自然科学の視点から人間社会の本質を解き明かそうとする、学際的なアプローチの書と言えるでしょう。
本書が1952年当時に売れた背景には、戦後の価値観が大きく揺れ動く時代状況があったと考えられます。敗戦から立ち直り、日本が主権を回復したこの時期、多くの人々は従来の精神論やイデオロギーに代わる、新たな人間観や社会観を模索していました。そのような中で本書は、当時まだ目新しかった霊長類学の知見を基に、動物社会との比較という科学的かつ客観的な視点から「人間とは何か」を問い直しました。
これは、観念的な哲学や特定の政治思想に偏りがちだった従来の人間論とは一線を画すアプローチでした。サル社会の構造から人間社会の本質を読み解くという斬新な切り口は、科学的な合理性を求める時代の空気と合致し、知的好奇心旺盛な読者層に強く訴求したと推察されます。また、「毎日ライブラリー」という一般向け叢書から出版されたことで、専門家だけでなく幅広い層に届き、新しい時代の人間の「自己定義」を求める渇望に応える一冊として受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
