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本書は、刑事訴訟法における根幹原則の一つである「自由心証主義」を主題とした法学の専門書です。裁判官が法的な証拠法則に縛られず、自由な判断に基づいて証拠の価値を評価し、事実認定を行うプロセスを理論的に深く考察しています。特に本書は、その副題『有罪心証としての』が示す通り、自由な心証形成が、現実の裁判においていかにして「有罪」という結論へと形成されていくのか、その構造的・心理的メカニズムに焦点を当てています。単なる法解釈の解説に留まらず、判例分析や比較法的視点を通じて、自由心証主義の理念と、実務における運用の実態との間に横たわる緊張関係を鋭く描き出しています。
本書が発売された1956年当時は、戦後の新憲法および新刑事訴訟法が施行されてからまだ日が浅く、法曹界全体が新たな法体系の理念と実践のあり方を模索していた時代でした。特に、戦前の人権意識の薄い裁判への反省から、公正な事実認定の核心となる「自由心証主義」をいかに運用すべきかという点に、強い理論的要請があったと考えられます。多くの法律書が条文の解釈に終始する中で、本書は『心証』という、これまでブラックボックスとされてきた裁判官の主観的・内的な判断プロセスそのものを分析の対象としました。さらに『有罪心証として』という副題は、理想論だけでは語れない、実務家が肌で感じていたであろう「有罪への傾斜」という現実的な課題を正面から取り上げたものであり、この問題提起の鋭さが、変革期にあった法曹関係者の強い共感と需要を喚起し、必読の書としての地位を確立させた大きな要因であると推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1956年)
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