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本書は、植民地と植民政策を経済学の視点から体系的に分析する学術書です。著者の矢内原忠雄は、資本主義の発展段階論を理論的枠組みとし、植民地を「商品市場植民地」「資本市場植民地」「労働力市場植民地」といった経済的機能に基づいて類型化しました。本書の目的は、単に各国の植民地政策の歴史を記述することではありません。それぞれの類型において、宗主国と植民地の間にどのような経済的関係が構築され、資本がいかにして価値を増殖させていくのか、そのメカニズムを解明することにあります。具体的な事例として日本の台湾、朝鮮、満州統治などを取り上げつつも、感情論や政治的プロパガンダを排し、あくまで客観的な経済構造の分析に徹している点が特徴です。
本書が1935年当時に広く受け入れられた背景には、満州事変以降、日本の大陸進出が国策として本格化していた時代状況があったと考えられます。植民地経営は国家の最重要課題となり、官僚、軍人、実業家から知識人、学生に至るまで、植民地に関する体系的かつ理論的な知見への需要が急速に高まっていました。当時の植民地に関する言説の多くは、国威発揚を目的としたプロパガンダや、統治の実務的な手引きに留まっていました。これに対し、本書はマルクス経済学の分析手法を取り入れ、植民地支配を資本主義の構造的展開として冷静に解明する、科学的なアプローチを提示しました。この学術的な客観性と体系性が、植民地経営を合理的に推進したい層と、帝国主義を批判的に分析したい層という、一見相反する読者双方の知的好奇心を満たしたことで、他に類を見ない専門書として注目を集めたと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1935年)
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