📬 ロングセラー通信
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本書は、1956年にみすず書房から刊行された「原色版美術ライブラリー」シリーズの第8巻です。テーマをルネサンス期のヴェネツィア派絵画に絞り、ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼといった巨匠たちの作品を取り上げています。書名が示す通り、当時の最新技術であったカラー印刷による「原色版」の図版を豊富に掲載している点が最大の特徴です。各図版には、美術史の専門家による解説文が添えられており、作品の時代背景、技法、美術史上の意義などを学ぶことができます。学術的な知見を豊富なビジュアルと共に提供することで、専門家だけでなく一般の美術愛好家にも開かれた、画集と解説書双方の性格を併せ持つ一冊となっています。
本書が発売当初の1956年に広く受け入れられた理由は、戦後復興期の日本社会が抱えていた強い知的好奇心と、それを満たすための手段が限られていたという時代背景に深く関係していると考えられます。当時、海外渡航は一般人にとって夢物語であり、西洋美術の傑作を実見する機会は皆無に等しい状況でした。人々は書物を通して西洋文化への憧れを満たそうとしており、特に色彩豊かなヴェネツィア派の絵画を「本物に近い色で見てみたい」という強い欲求が存在したと推測されます。そのような中で、白黒図版が主流だった出版界において、高品質な「原色版」を掲げた本書の登場は画期的でした。擬似的ながらも鮮やかな色彩体験を提供したことが、他の類書に対する決定的な差別化要因となったのです。さらに、体系的な「美術ライブラリー」シリーズの一環として刊行されたことで、個別の書籍以上の信頼性と、全巻を揃えたいという収集欲を読者に与えたことも、成功を後押しした要因と言えるでしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?
