📬 ロングセラー通信
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本書は、東洋美術史家である小林太市郎が、1940年代初頭の戦時下中国において、北京や上海、杭州などの都市を巡り、自らの眼で見た中国陶磁器について記録した見聞録です。内容は、各地の古美術市場の様子、収集家や骨董商との交流、個々の陶磁器作品に対する美術史的な考察や真贋の見分け方など、多岐にわたります。単なる学術的な解説書や図録とは異なり、著者の個人的な体験や移動の記録、そして作品に対峙した際の感動や思索が、随筆のような筆致で生き生きと描かれています。そのため、専門的な知見と紀行文としての性格を併せ持つ、ユニークな構成の書物となっています。
本書が発売された1943年当時、日本は日中戦争の渦中にありました。一般の国民が中国大陸の文化に直接触れる機会は極めて限定されており、特に美術品に関する現地の「生の情報」は非常に希少価値が高かったと考えられます。多くの美術愛好家や研究者にとって、大陸の文化や芸術への憧憬と知的好奇心は存在したものの、それを満たす手段は限られていました。そのような状況下で、当代一流の美術史家が、実際に現地を歩き、自らの専門的な眼で選び抜いた陶磁器について語る本書は、読者にとって渇望していた一次情報そのものであったと推測されます。他の類書が日本国内の伝世品や文献研究に基づいていたのに対し、本書の持つ「現地報告」としての鮮度と臨場感は、圧倒的な差別化要因となり、当時の知識層や愛好家の強い支持を集めるに至ったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
