📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
渡辺佐平著『金融論』は、貨幣、信用、銀行、金融市場、金融政策といった、経済の血液とも言える金融システムの根幹をなす要素について、その仕組みと機能を体系的に解説する学術書です。本書は、複雑な数式を極力用いず、平易な言葉で金融現象の背後にある論理を解き明かすことを主眼としています。内容は、貨幣の本質論から始まり、銀行による信用創造のメカニズム、利子率の決定理論、そして中央銀行が担う金融政策の役割と手段へと展開されます。個別の金融技術や商品を追うのではなく、国民経済全体の循環の中で金融がどのような役割を果たしているのか、その普遍的な構造を歴史的・制度的な視点から理解させることを目的としています。
本書が発売された1954年頃は、日本が戦後復興を経て高度経済成長期へと向かう黎明期にあたります。企業の設備投資意欲は旺盛で、経済活動が活発化する中、その根幹を支える「金融」の仕組みを体系的に理解したいという社会的ニーズが急速に高まっていたと考えられます。このような時代背景の中、東京大学教授という権威ある著者が、学術出版として高い信頼性を持つ「岩波全書」から本書を刊行したことは、読者に大きな安心感を与えました。当時の類書が専門家向けに難解な記述をしていたのに対し、本書は学生や一般の知識人を対象に、金融の全体像を網羅的かつ平易に解説するスタイルを確立しました。経済学の教科書としての需要と、社会人の実務的・知的な要求の両方に応えることに成功した点が、発売当初に広く受け入れられた主要因と推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1954年)