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本書は、明治維新以前の日本の数学、すなわち「和算」の歴史を体系的に記述した全5巻にわたる大著の第2巻です。本書では特に、和算の黄金期とされる江戸時代中期に焦点を当て、関孝和をはじめとする高名な和算家たちの業績を詳細に解説します。円周率の計算、方程式論、行列式の発見といった具体的な数学的成果を、原典史料に基づいて丹念に追跡。単なる業績の紹介にとどまらず、それぞれの発見がどのような数学的思考から生まれ、和算の発展にどう寄与したのかという歴史的文脈を明らかにすることを目的としています。西洋数学とは独立した知的営為としての和算の全体像を、学術的な厳密さをもって描き出す一冊です。
本書が1956年という時代に受け入れられた背景には、戦後復興期特有の文化的機運があったと考えられます。経済復興が進み「もはや戦後ではない」と言われる中で、人々は物質的な豊かさだけでなく、日本の文化的・学術的なアイデンティティを再確認したいという欲求を抱いていました。このような時代において、西洋数学とは独立に高度な発展を遂げた「和算」の歴史は、日本の知的伝統の豊かさを示す格好のテーマでした。
本書は、単なる一研究者の著作ではなく、数学史の第一人者であった藤原松三郎の遺稿を、最高の学術機関である日本学士院が編纂・刊行したという圧倒的な権威性をまとっていました。類書が断片的な研究に留まる中で、本作は和算の歴史を網羅的・体系的に記述した初の「正史」として登場し、研究者や教育者、そして知的好奇心旺盛な一般知識層にとって、他に選択肢のない必読文献として迎えられたと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?
