📬 ロングセラー通信
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本書は、日本におけるイラン学の権威・足利惇氏が、1934年に行ったペルシア(現イラン)留学の経験をまとめた紀行文です。単なる旅の記録に留まらず、著者の専門的知見に基づき、古代から続くペルシアの歴史、イスラーム文化、美術、言語、そしてそこに暮らす人々の気質や生活様式を深く掘り下げています。若き研究者としての瑞々しい視点と、該博な知識に裏打ちされた解説が織り交ぜられており、読者を学術的かつ情緒的な探訪へと誘います。神話の時代から近代に至るまでの壮大な時間軸と、バザールの喧騒から砂漠の静寂までの広大な空間軸を往還しながら、ペルシアという文明の多層的な姿を浮き彫りにする一冊です。
本書が発売された1949年当時に売れた理由は、終戦直後の社会状況と読者の渇望に、本書が持つ希少性と権威性が見事に合致したためと考えられます。当時の日本はGHQ統治下にあり、一般国民の海外渡航は事実上不可能でした。人々は戦争による閉塞感から解放され、未知なる海外、特に欧米とは異なる文化圏への強い憧れと知的好奇心を抱いていました。このような状況下で、ペルシアという神秘的な響きを持つ国に関する、第一人者による本格的な見聞録は、まさに待望の書であったと推察されます。単なる旅行記ではなく、学術的裏付けのある深い洞察に満ちた内容は、他に類を見ない情報源としての価値を持っていました。それは、日々の生活の厳しさから読者を解き放ち、知的な冒険へと誘う、貴重な「窓」として機能したのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1949年)