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野上素一著『イタリア語入門』は、イタリア語の文法体系を網羅的に解説することを目的とした学術的な入門書です。本書は、発音の基礎から始まり、品詞ごとの詳細な文法規則、動詞の活用、統語論に至るまで、言語の構造を体系的に学べるように構成されています。単なる旅行会話や日常フレーズの紹介に留まらず、例文には古典文学からの引用も含まれるなど、教養としてイタリア語を深く理解したい学習者を対象としています。豊富な練習問題も収録されており、読者が文法知識を確実に定着させることを助けます。初学者がイタリア語という言語の全体像を、論理的かつ精密に把握するための一冊と言えるでしょう。
本書が発売された1954年当時、日本は戦後の復興期にあり、海外、特にヨーロッパの文化に対する強い憧れと知的探究心が社会に満ちていたと考えられます。イタリアはオペラ、美術、文学、そしてネオレアリズモ映画など、文化の源泉として知識人や学生層から特別な関心を集めていました。このような時代背景の中で、本格的にイタリア語を学びたいというニーズが生まれていたと推測されます。
当時、信頼に足るイタリア語の入門書は極めて限られていたでしょう。その中で、学術出版の権威である岩波書店の「岩波全書」シリーズの一冊として、イタリア文学の専門家である野上素一氏が執筆した本書は、他の類書とは一線を画す信頼性と体系性を備えていました。単なる語学学習に留まらず、「学問としてのイタリア語」を求める層にとって、本書は待望の決定版として受け入れられ、発売当初から安定した支持を獲得したと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1954年)