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(1955年)
本書は、17世紀初頭にポルトガル人宣教師ジョアン・ロドリゲスが、当時の日本の口語(主に京阪地方で話されていた言葉)を体系的に記述したポルトガル語の文法書『Arte da Lingoa de Iapam』の日本語訳です。国語学者の土井忠生が、原著を翻訳し、詳細な補注を加えています。内容は、文字や発音の規則から始まり、名詞、代名詞、助詞といった品詞の分類、複雑な動詞の活用、敬語の使い方、文の構造に至るまで、日本語文法の全体像を網羅しています。宣教師が日本語を学習するという実践的な目的で編纂されたため、外国人の客観的な視点から当時の話し言葉や社会慣習が記録されており、日本語史や近世史研究における第一級の基本文献として位置づけられています。
1955年という時代において、本書が専門書として強く求められた背景には、戦後の学術界の再興という大きな文脈があると考えられます。戦争が終わり、日本の言語や文化を客観的・科学的に再評価しようという機運が高まる中、国語学や歴史学の研究が本格化していました。このような状況下で、これまで原典でしか触れることのできなかったロドリゲスの文法書という第一級史料は、研究者や学生にとって渇望の対象だったと推測されます。本書は、その決定的な史料を、この分野の第一人者である土井忠生の詳細な訳注付きで提供しました。これは単なる翻訳を超え、信頼できる専門家による「解読」を経たことで、多くの研究者が安心して研究の出発点とできるという絶大な価値を持ちました。日本人が著した従来の国語文法書とは異なり、「17世紀の西洋人が日本語をどう構造化したか」という外部からの視点は、日本語研究に新たな分析の切り口をもたらすものであり、その学術的な独自性が専門家層の需要を確実に取り込んだと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?