📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、単なる俳句の作り方や名句の鑑賞を目的とした入門書ではありません。副題に「史論的叙述による」とある通り、正岡子規以降の近代俳句が、どのような歴史的背景のもとで成立し、いかなる思想的対立を経て展開してきたのかを、批判的な視点から分析・叙述する学術書です。著者は、近代俳句を牽引した子規、虚子、秋桜子といった俳人たちの活動や論争を、単なる文学上の出来事としてではなく、近代日本の思想史・精神史の中に位置づけ直そうと試みています。俳句という文学形式を、客観的な歴史研究の対象として捉え、その成立過程と構造を解き明かすことを主眼としており、個々の句の解釈よりも、俳句史全体の大きな流れを理解するための枠組みを提供します。
本書が発売された1955年頃は、戦後の価値観の転換期にあたり、文化・学問の世界でも戦前からの権威を問い直す気運が高まっていた時代と考えられます。当時の俳句界は、伝統俳句と社会性俳句や前衛俳句といった新しい動きが混在し、混沌としていました。このような状況下で、読者には、目の前の潮流を理解するための歴史的な見取り図が求められていたと推測されます。多くの類書が特定の流派の作法や精神論を説く中で、本書は「史論」「批判」という客観的かつ学術的なアプローチを打ち出しました。これは、単なる趣味人ではなく、文学を学問として捉えたいと考える学生や研究者、知的好奇心の強い読者層にとって、非常に新鮮なものだったでしょう。既存の権威を相対化し、近代俳句の歴史を体系的に整理しようとする本書の姿勢が、時代の知的なニーズと合致し、発売当初の評価を確固たるものにしたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1955年)
ランキングデータなし