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本書は、文豪・夏目漱石の直弟子であったドイツ文学者の小宮豊隆が、師の生涯と文学を克明に綴った全3巻にわたる評伝の第2巻です。漱石が朝日新聞社に入社し、『虞美人草』から『彼岸過迄』に至る作品を執筆した時期を中心に扱っています。単なる作品解説に留まらず、著者自身が直接見聞きした漱石の日常の言動、書簡や日記といった一次資料を豊富に引用しながら、その内面世界や思想の変遷を丹念に追跡します。弟子という極めて近い距離から、一人の人間としての漱石の実像を多角的に描き出すことを目的とした、詳細な記録文学と言えるでしょう。
本書が発売された1953年頃は、戦後の混乱が収束し、人々が文化的・知的な営みを再開し始めた時期でした。国民的作家である夏目漱石への関心も再び高まり、その作品だけでなく、作家自身の人物像や思想の背景を深く知りたいというニーズが存在したと考えられます。このような状況下で、漱石の直弟子であった小宮豊隆による本書は、決定的な評伝として読者に受け入れられたと推察されます。他の研究書が文献に基づいて推測するしかない漱石の日常や人柄を、著者は「直接の目撃者」として語ることができます。この「証言者」としての圧倒的な権威性と、漱石全集の編纂にも携わった著者ならではの一次資料へのアクセシビリティが、他の類書にはない信頼性とリアリティを生み出しました。学術的な正確さと弟子ならではの愛情のこもった筆致が両立した本書は、漱石を深く知りたいと願う当時の読者にとって、まさに待望の一冊だったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

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