📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、旧帝国海軍の潜水艦「伊号第五八潜水艦」の艦長であった著者・橋本以行氏による、太平洋戦争末期の戦闘記録です。物語の中心となるのは、1945年7月、原子爆弾の主要部品をテニアン島へ輸送した直後のアメリカ海軍重巡洋艦「インディアナポリス」を撃沈した作戦の全貌です。単なる戦闘の経過だけでなく、索敵から魚雷発射に至るまでの艦内の緊迫した状況や乗組員の心理が、指揮官自身の視点から克明に描かれています。また、戦後、インディアナポリスの艦長が軍法会議にかけられた際、著者がアメリカ側の証人として召喚された体験も記されており、戦闘行為とその後の国際的な影響までを射程に入れたドキュメンタリーとなっています。
本書が発売された1955年は、終戦から10年が経過し、社会が戦後の混乱から立ち直りつつあった時期です。多くの国民が戦争の記憶を生々しく保持しており、「あの戦争は何だったのか」という問いへの答えを求める強い知的欲求が存在したと考えられます。そのような時代背景の中、本書はいくつかの点で読者の心を掴んだと推測されます。第一に、艦長自らが筆を執った「当事者による一次情報」としての圧倒的な信頼性です。ジャーナリストや歴史家による戦記とは一線を画す、現場の生々しい記録は、他に代えがたい価値を持っていました。第二に、アメリカの重巡洋艦「インディアナポリス」撃沈という、戦争末期を象徴する劇的な事件を扱っていた点です。原爆輸送という歴史的任務を終えた直後の艦を沈めたという事実は、国民的な関心事を強く刺激したと考えられます。そして第三に、戦後の軍事裁判で敵国の法廷に立つという、他の戦記にはない国際的なドラマを含んでいた点も、類書との大きな差別化要因となり、多くの読者を惹きつけたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
