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本書は、1955年に刊行された「大衆文学代表作全集」シリーズの第15巻です。昭和初期に活躍した二人の作家、林不忘と国枝史郎の代表作を収録しています。林不忘は、隻腕隻眼の剣士・丹下左膳を主人公とする痛快な剣戟活劇で知られ、エンターテインメント性の高い時代小説の潮流を代表する作家です。一方、国枝史郎は『神州纐纈城』に代表されるように、絢爛豪華で幻想的な世界観を持つ伝奇小説の大家として知られています。この一冊は、同じ大衆文学という枠組みの中にありながら、片やリアルな剣戟アクション、片や荒唐無稽な伝奇ロマンという、対照的な魅力を持つ二つの大きな流れを同時に概観できるアンソロジーとして編纂されています。
本書が発売された1955年頃は、戦後の復興期にあたり、多くの人々が日々の厳しい生活を忘れさせてくれる娯楽を求めていた時代と考えられます。ラジオや映画が全盛期を迎えつつありましたが、読書、特に貸本などを通じた物語へのアクセスも重要な娯楽の一つでした。このような背景の中、戦前の大衆娯楽小説が、ある種のノスタルジーと共に再評価される気運があったと推測されます。
類書が単一の作家を特集する全集であったのに対し、本書は「代表作全集」として、林不忘と国枝史郎という二人の人気作家の作品をカップリングしています。これにより読者は、一冊で「剣戟」と「伝奇」という異なるジャンルの「おいしいところ」を味わうことができました。これは、限られた予算で多様な娯楽を楽しみたいという当時の読者ニーズに合致した、コストパフォーマンスの高い提案だったと言えるでしょう。また、「全集」という体系的なフォーマットは、個別の文庫本とは異なり、読者の所有欲や教養への憧れを満たす役割も果たしたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1955年)