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本書は、久松潜一監修による全6巻の『日本文学史』のうち、平安時代を扱う第2巻です。個別の文学作品の解説に留まらず、その成立背景にある社会制度、文化、作者の生涯、さらには仏教思想の影響といった多角的な視点から、文学事象を総合的に捉えようと試みています。『源氏物語』や『枕草子』といった王朝文学の傑作が、どのような歴史的文脈の中で生まれ、展開していったのかを、学術的な研究成果に基づいて体系的に記述します。特定の批評理論に偏ることなく、実証的なアプローチで文学史の流れを整理しており、日本の中古文学を学ぶ上での通史的な理解を提供することを目的とした一冊です。
本書が発売された1955年頃は、戦後の混乱期を脱し、日本が経済的・文化的な復興を目指していた時代と考えられます。大学教育が普及し始め、学術的な教養に対する渇望が高まる中で、信頼できる体系的な知識源が求められていました。そのような状況下で、国文学の権威である久松潜一が監修した全6巻構成の『日本文学史』は、その網羅性と体系性によって、類書との明確な差別化を果たしたと推測されます。それまでの文学史研究が断片的であったり、特定の流派に偏りがちだったりしたのに対し、本書は学術的客観性に基づいた「通史」としての信頼性を提示しました。この「スタンダードの不在」という市場の空白に、権威による包括的な知識体系を提供したことが、教員、研究者、学生といった知的好奇心の高い読者層のニーズに合致し、発売当初の成功につながった要因ではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
