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本書は、マルクス主義哲学の根幹をなす「唯物論的弁証法」について、その理論的構造を体系的に解明することを目的とした学術研究書です。著者の田辺振太郎は、マルクスやエンゲルスの著作はもちろん、その思想的源流であるヘーゲル哲学にまで遡り、弁証法がいかにして唯物論的に転換されたのかを詳細に論じます。また、エンゲルスの『自然弁証法』などを踏まえ、当時の自然科学の成果と弁証法的思考との関連性を探求している点も大きな特徴です。単なる思想の解説に留まらず、認識論的な観点から弁証法の論理を再構築し、その科学的根拠を明らかにしようとする、きわめて専門的かつ緻密な哲学的探究の書といえます。
本書が発売された1958年当時の日本は、安保闘争前夜の政治的緊張が高まる時代であり、学生や知識層の間でマルクス主義が現実を分析し変革するための強力な理論的武器として受容されていました。この時代、彼らは単なるスローガンではなく、思想の根幹をなす哲学的・理論的な裏付けを渇望していたと考えられます。数多く存在したマルクス主義の入門書や解説書の中で、本書はヘーゲル哲学との関係性まで深く掘り下げた、本格的な学術書としての性格を持っていました。この専門性と網羅性が、思想的武装を求める読者の「本物への渇望」に応えたと推測されます。表層的な理解では満足できない知的好奇心の強い層にとって、本書は難解ではあっても、依拠するに値する信頼性の高い理論的支柱として受け入れられ、当時の思想的ニーズに合致した結果、広く読まれたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1958年)