📬 ロングセラー通信
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本書は、文化人類学者の小川さやかが、東アフリカ・タンザニアの路上商人たちの経済活動をフィールドワークに基づき分析したノンフィクションです。著者は、彼らの「その日暮らし」と呼ばれる不安定に見える生活が、実は独自の合理性と社会的論理に貫かれていることを明らかにします。利益の最大化を目的とする近代資本主義とは異なり、彼らの経済は贈与、借金、見栄、共存といった人間関係の網の目の中で営まれています。本書は、タンザニアの商人たちの具体的なエピソードを通して、数字や効率だけでは測れない「もう一つの資本主義経済」の姿を生き生きと描き出し、我々が自明視している経済観や労働観を根本から問い直す一冊です。
本書が2016年に発売され広く受け入れられた背景には、当時の社会的な閉塞感と新しい経済モデルへの渇望があったと考えられます。リーマンショック以降、格差拡大や不安定雇用の問題が顕在化し、多くの人々が近代資本主義のシステムに息苦しさや限界を感じていました。このような状況下で、「その日暮らし」というタイトルは、単なる貧困の話ではなく、既存の価値観から自由なオルタナティブな生き方を想起させ、読者の関心を強く惹きつけたと推察されます。
また、同時期に資本主義を論じた書籍は多数ありましたが、本書は人類学のフィールドワークという手法で、タンザニアの路上商人という極めて具体的な対象を通して、抽象的になりがちな議論にリアリティと物語性を与えました。単なる経済分析や貧困ルポとは一線を画し、「信頼」や「贈与」が機能する異質な経済圏を生き生きと描いた点が、従来のシステムに疑問を抱くビジネスパーソンや学生から強い支持を集める要因になったのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?

(2016年)