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本書は、幕末から明治初期にかけて日本を訪れた多数の外国人による記録を渉猟し、その記述を丹念に再構成することで、近代化以前の日本の姿を浮き彫りにするノンフ��クションです。政治や経済といったマクロな歴史ではなく、庶民の日常生活、道徳観、幸福感、自然との関わり方といったミクロな視点に焦点を当てています。著者の主張を前面に出すのではなく、外国人たちの驚きや賞賛、あるいは戸惑いの声を膨大に引用するスタイルが特徴です。西洋的な近代とは異なる価値観や社会システムが存在した「もう一つの世界」の姿を、読者が追体験できるように描き出しています。
本書が発売された2005年頃は、バブル崩壊後の長期的な経済停滞、いわゆる「失われた10年」を経て、社会全体が先行きの見えない閉塞感に覆われていた時代と考えられます。経済成長を至上命題としてきた近代化路線への懐疑が広がる中で、本書が提示した「西洋近代とは異なる価値観に基づいた、豊かで幸福な社会」というビジョンは、多くの読者にとって鮮烈な驚きと希望を与えました。単なるノスタルジーに陥るのではなく、外国人という客観的な第三者の視点から集められた膨大な一次資料に基づいている点が、知的好奇心の高い層に強く訴求したと推測されます。英雄史観や経済史観とは一線を画し、名もなき民衆の暮らしの中に「失われた日本の豊かさ」を見出すというアプローチが、当時の読者ニーズと合致し、大きな反響を呼んだと考えられます。
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