📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能
本書は、20世紀フランス文学を代表する作家アンドレ・ジイドの著作を網羅的に集成した全集です。1947年にノーベル文学賞を受賞したジイドの、小説、評論、戯曲、そして彼の文学と思想の核心をなす長大な『日記』などが体系的に収録されています。『狭き門』『背徳者』『贋金つくり』といった代表的な小説作品に加え、彼の芸術観や社会観を示す評論も含まれており、一人の作家の生涯にわたる思索の軌跡を多角的に追体験することができます。個人の自由、道徳と偽善、宗教的葛藤、自己探求といった、ジイドが一貫して追求したテーマ群の全体像を、個別の作品ではなく、 interconnectedな知的体系として理解するための資料的性格を持つ書籍群です。
本全集が発売された1950年頃の日本は、敗戦による価値観の崩壊を経て、新たな精神的支柱を西洋の思想や文学に求めていた時代でした。特に、サルトルやカミュと並び称されるジイドは、旧来の道徳や社会規範に囚われず、個人の内面に深く分け入り、自己の真実を追求する姿勢が、新しい生き方を模索する知識層や若者から強く支持されたと考えられます。このような時代背景において、断片的な翻訳作品ではなく、一人の作家の思想世界を体系的に理解できる「全集」という形式は、知的好奇心を満たすだけでなく、教養の証として書架に揃えたいという所有欲をも刺激したと推察されます。新潮社という大手出版社が、当代一流の翻訳家を起用して刊行したことも、その信頼性と権威性を高め、読者が安心して知的投資を行える対象として受け入れられた一因でしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?
