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本書は、昆虫学者・内田清之助によって編纂された、日本の昆虫を体系的に解説する図鑑です。「学生版」と銘打たれている通り、専門家だけでなく、中等・高等教育の学生や一般の昆虫愛好家を主な対象としています。内容は、昆虫の分類体系に基づき、各種の形態、生態、分布などを、精密な図版と簡潔な解説文で構成しています。写真ではなく線画による図版を用いることで、種の同定に必要な形態的特徴を明確に示しているのが特徴です。単なる種の羅列に留まらず、分類学的な視点から昆虫の世界を俯瞰できる構成となっており、学習・研究の入門書としての役割を担っています。
本書が1949年当時に広く受け入れられた背景には、戦後復興期の教育熱の高まりがあったと考えられます。終戦から数年が経ち、社会が安定を取り戻し始める中で、特に科学教育の重要性が認識され始めていました。学校教育の現場では、質の高い教材が渇望されており、本書のような本格的かつ体系的な図鑑は、学生の自学自習用だけでなく、教師が授業で用いる副読本としても理想的だったと推測されます。
また、当時の類書と比較して「学生版」と明確にターゲットを絞った点が、大きな差別化要因となったと考えられます。専門家向けの難解な学術書と、子供向けの簡易な絵本との間に存在した空白の市場、すなわち「学びたいアマチュア」層のニーズを的確に捉えたのです。内田清之助という当代一流の学者が監修したことによる権威性と信頼性も、教育現場での採用を後押しし、初期の普及に大きく貢献したと見られます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1949年)