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本書は、生物学、医学、農学、薬学といった生命科学分野の研究者や学生を対象に、統計学の基本的な考え方と手法を解説する入門書です。平均、分散、標準偏差といった記述統計の基礎から、推定や検定といった推測統計学の核心までを扱っています。特に、t検定、分散分析、相関と回帰といった、生物学的な実験や調査で得られたデータを分析・解釈するために不可欠な手法に焦点を当てています。本書の特徴は、難解な数理的証明を極力避け、生命科学の具体的な研究事例を豊富に用いることで、読者が自らの研究テーマと結びつけながら統計学のロジックを直感的に理解できるよう構成されている点にあります。理論の厳密さよりも、実践的な場面で統計的手法をいかに適用するかという応用の側面を重視した一冊です。
本書が発売された1956年頃の日本は、戦後復興を経て科学研究の近代化が急務とされていました。特に医学や農学の分野では、欧米で確立されていた客観的なデータ評価手法、すなわち統計学の導入が強く求められていました。しかし当時、国内で入手できる統計学の書籍は、数学者を対象とした高度な専門書や、翻訳が難解な洋書がほとんどであり、生物学系の研究者が自身の研究にすぐに活用できるような平易な入門書は市場に存在しなかったと考えられます。このような状況下で登場した本書は、「生物学の具体例で学べる、日本語による統計学入門」という、まさに研究現場が渇望していたニーズを的確に捉えました。抽象的な数式ではなく、遺伝の実験や薬効評価といった身近なテーマを通じて学べるため、多くの研究者や学生にとって、統計学という高いハードルを越えるための最初の、そして唯一に近い選択肢となったのです。この明確なポジショニングが、発売当初の成功を支えた最大の要因と考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1956年)