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本書は、物理学者・菊池正士によって著された、原子物理学の体系的な教科書です。原子の構造、X線、放射能、原子核の構造と反応、素粒子といった、原子物理学の根幹をなすテーマを網羅的に扱っています。内容は、実験的な事実の提示と、それを説明するための理論的な枠組みの両面から構成されており、数式や専門的な記述を用いて学問的な厳密性を追求しています。主に物理学を志す学生や専門の研究者を対象としており、単なる知識の紹介にとどまらず、物理学的な思考法そのものを伝えることを意図して書かれた学術書です。1949年時点における、この分野の到達点を集大成したものと言えます。
本書が発売された1949年当時に売れた理由は、終戦直後の日本が置かれた特異な時代背景と、国民的な知的好奇心に強力に応えたからだと考えられます。広島・長崎への原爆投下という衝撃的な経験を経て、国民の間では「原子」や「原子力」に対する関心が、畏怖と期待の両面から極めて高まっていました。科学技術による国家再建が叫ばれる中、その象徴である原子物理学の本格的な解説書への需要は、学術界にとどまらず知識層全体に広がっていたと推測されます。著者の菊池正士氏は、当時日本の原子核研究をリードする第一人者であり、その圧倒的な権威性が書籍の信頼性を保証しました。多くの類書がまだ存在しない中で、第一人者が日本語で書き下ろした体系的な専門書という点が、渇望されていたニーズに合致し、大きな支持を集める要因となったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?