📬 ロングセラー通信
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本書は、古代ギリシアにおいて哲学が誕生する以前の知的状況を探求する一冊です。著者の出隆は、ホメロスやヘシオドスの叙事詩に描かれる神話的(ミュトス)な世界観から、いかにしてタレスをはじめとする初期の自然哲学者たちが提唱した理性的(ロゴス)な思考様式が生まれたのか、その劇的な移行プロセスを解き明かします。西洋哲学史の単なる概説ではなく、「知性はいかにして生まれたのか」という根源的な問いをテーマに、西洋的思考の源流そのものを描き出すことを目的としています。神話、宗教、詩、そして初期科学が未分化であった時代の精神史を丹念に読み解き、哲学が成立するための知的準備がいかにして整えられていったかを論じています。
本書が1951年当時に売れた背景には、戦後の日本が直面していた深刻な知的渇望があったと考えられます。第二次世界大戦の敗戦により、それまでの価値観が根底から覆された日本社会では、民主主義や科学的合理性といった西洋近代思想が、国家再建の新たな指針として強く求められていました。このような時代において、西洋的理性の「起源」そのものを解き明かす本書は、単なる古典研究の書を超え、新しい時代を築くための思想的源流を理解したいという読者の切実なニーズに応えたと推測されます。多くの哲学解説書が個々の思想家の紹介に留まる中で、「神話から理性へ」という知の誕生のダイナミズムを描いた本書の物語性は、思想的支柱を求める当時の知識人や学生層に強く響き、他にない独自の価値を提供したのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
