📬 ロングセラー通信
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本書は、物理学の広範な領域を体系的に概観することを目的とした入門書です。力学、熱学、波動、電磁気学といった古典物理学の根幹から、出版当時は比較的新しい分野であった相対性理論や量子論の初歩に至るまで、物理学の全体像を提示します。数式による厳密な証明を追い求めるのではなく、各理論がどのような歴史的・思想的背景から生まれ、いかにして発展してきたかという概念的な理解を重視しているのが特徴です。物理学を専門としない一般の読者や、これから学問の世界に足を踏み入れる学生が、物理学という学問の壮大な物語と思考の枠組みを掴むための道標となる一冊と言えるでしょう。
本書が1950年当時に売れた理由は、戦後復興期の社会が抱いていた科学技術への強い期待と、新しい時代の教養を求める知的好奇心に見事に応えたからだと考えられます。当時は、原子力などの登場により物理学への社会的な関心が高まる一方、一般読者が手に取れる体系的な入門書は限られていました。難解な専門書と断片的な知識を伝える啓蒙書との間に存在する空白を、本書は埋めたのです。著者の石原純がアインシュタインを日本に招聘したことでも知られる高名な物理学者であったこと、そして「岩波全書」というブランドが持つ知的な権威と信頼性も、読者の購買意欲を強く後押しした要因でしょう。科学立国を目指す時代の空気の中で、物理学の全体像を信頼できる形で学びたいという読者ニーズに、本書は的確なポジショニングで応えたと言えます。
では、なぜ売れ続けたのか?
