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本書は、ノーベル物理学賞受賞者であるエルヴィン・シュレーディンガーが、生命という現象を物理学の法則から解明しようと試みた講演録です。彼は「生命体は、なぜ物理学の基本法則であるエントロピー増大の法則に逆らい、秩序を維持し続けられるのか」という根源的な問いを立てます。その答えとして、生命は環境から「負のエントロピー」を取り入れることで自らの秩序を保っていると論じました。また、遺伝情報を担う物質を、単なる繰り返し構造ではない「非周期性結晶」であると予見し、その安定性と膨大な情報量を説明しようとしました。本書は、生命の物理的・化学的基盤を探求し、分子生物学の発展に大きな影響を与えた科学的思索の記録といえます。
本書が1951年当時に大きな注目を集めた理由は、時代背景と著者の特異な立ち位置にあったと考えられます。当時は第二次世界大戦を経て、物理学が原子爆弾の開発などで絶大な権威を誇っていた時代でした。一方で生物学では、遺伝子の正体がDNAであると特定される直前(ワトソンとクリックの論文は1953年)であり、生命の謎に対する社会全体の知的好奇心が最高潮に達していました。このような状況下で、物理学の最高権威であるシュレーディンガーが、専門外である「生命」という最大の謎に切り込むというアプローチは、極めて斬新で魅力的でした。純粋な生物学の専門書とは異なり、物理学の視点から生命の原理を問うという「越境性」が、当時の読者に強烈なインパクトを与え、多くの知識層を惹きつけたのでしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?
