📬 ロングセラー通信
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本書は、霊長類学者・今西錦司が、大分県の高崎山に生息するニホンザルの群れを対象に行ったフィールドワークの記録です。単なるサルの生態観察にとどまらず、著者が世界で初めて導入した「個体識別法」を用いて、群れを構成する全個体を識別し、その社会構造を解明していく過程が描かれています。サルの群れにおける順位制、リーダーの役割、家族関係、そして有名な「イモ洗い行動」に代表される文化の伝播など、サルが複雑な社会を形成していることを科学的に明らかにしました。動物の行動記録であると同時に、未知の社会構造を解き明かしていく科学的探究のドキュメンタリーであり、人間社会を相対的に捉えるための視点を提供する一冊です。
本書が発売された1955年当時に売れた理由は、主に3つの要因が重なったことにあると考えられます。第一に、時代背景として、戦後の復興期を経て人々が知的好奇心や文化的な豊かさを求め始めていた点が挙げられます。科学の新しい発見に対する関心が高まっていた時代でした。第二に、本書の舞台である高崎山自然動物園が1953年に開園し、メディアで頻繁に取り上げられる人気の観光地となっていたことです。多くの人が関心を寄せる「旬のトピック」の裏側を、第一線の研究者が解き明かすという企画が、読者の興味を強く惹きつけたと推測されます。第三に、類書との圧倒的な差別化です。それまでの動物記が擬人化や断片的な観察に留まっていたのに対し、全個体を識別して社会構造を明らかにするという今西錦司の科学的手法は画期的でした。これは、単なる動物の話ではなく、未知の世界に挑む科学の冒険譚として、多くの読者に知的興奮を与えたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
