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本書は、物理学者・三宅静雄によって著された、電子線の物理学的性質とその応用技術に関する専門入門書です。内容は、まず電子が持つ波動としての性質(ド・ブロイ波)を基点に、電子回失現象の理論的背景を体系的に解説します。続いて、その物理現象を応用した核心的な技術である電子顕微鏡について、その構造、原理、そして限界に至るまでを詳述。さらに、電子回折が結晶構造の解析にいかにして利用されるかを示し、当時の物質科学研究の最前線で不可欠な知識と思考法を提供することを目的としています。特定の応用事例の紹介に留まらず、根底にある物理原理の理解に重きを置いた構成となっています。
本書が発売された1953年当時、日本は戦後復興期にあり、科学技術立国を目指す気運が社会全体で高まっていたと考えられます。物理学の分野では量子力学が発展し、その応用技術である電子顕微鏡は、物質科学や医学・生物学といった広範な研究領域でその重要性が急速に認識され始めていました。このような時代背景の中、大学で物理学を学ぶ学生や若手研究者、さらには自身の研究に電子線技術の導入を検討する他分野の研究者にとって、この新しい分野の基礎を日本語で体系的に学べる教科書への需要は非常に高かったと推測されます。当時、同様のテーマを扱う質の高い和書は限られており、海外の専門書に頼らざるを得ない状況でした。そこに、当該分野の第一人者である三宅静雄氏が、信頼ある岩波全書シリーズの一冊として執筆した本書が登場したことは、読者にとって「待望の一冊」であり、専門知識を求める層のニーズに的確に応えた結果、広く受け入れられたと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1953年)