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本書は、動物学者・大島正満によって1944年に執筆された、いわゆる「大東亜共栄圏」とされた地域(主に東南アジアや台湾など)に生息する毒蛇に関する専門的な解説書です。各毒蛇の学名、和名、分布、形態といった生物学的な情報に加え、毒の成分や作用、咬まれた際の症状、さらには血清療法などの対処法について、図版を交えながら詳細に記述しています。単なる学術的な図鑑に留まらず、現地での遭遇を想定した注意点や応急処置といった、極めて実用的な情報が網羅されているのが特徴です。その内容は、専門的な正確性と現場での実践性を両立させることを目的として構成されています。
本書が発売された1944年は、太平洋戦争の末期にあたります。日本の戦線が南方へと拡大し、多くの兵士、軍属、技術者が東南アジアなどの亜熱帯・熱帯地域へ派遣されていました。彼らにとって、日本本土とは全く異なる環境に潜む毒蛇は、戦闘と同様に生命を脅かす現実的な脅威でした。このような時代背景において、本書は単なる生物学の専門書ではなく、現地での生存確率を上げるための「サバイバル・マニュアル」として極めて強い需要があったと考えられます。台湾での研究経験が豊富な爬虫類学の権威による執筆という信頼性も相まって、個人的な知識欲だけでなく、軍や政府機関といった組織レベルでの安全確保という切実なニーズに応える一冊として、その価値を認められたと推測されます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1944年)