📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能

(1957年)
本書は、放射線が生物の細胞にどのような影響を与えるのかを、物理学的な視点から体系的に解説した学術書です。放射線の物理的性質から、それが細胞内の分子、特に遺伝子や染色体にどのように作用し、最終的に細胞死や突然変異といった生物学的効果を引き起こすのか、そのメカニズムを解き明かそうと試みています。特に、放射線による作用を確率的な事象として捉え、数理モデルを用いて定量的に説明する「標的説(ターゲットセオリー)」を理論的中心に据えているのが特徴です。生物学的な現象を物理学の言葉で記述することで、この分野の草創期における理論的枠組みを提示した一冊と言えます。
本書の邦訳が発売された1957年頃は、第二次世界大戦後の原子力時代の黎明期にあたります。広島・長崎への原爆投下やビキニ環礁での水爆実験(第五福竜丸事件)などを経て、放射線の生物学的影響は社会全体の重大な関心事となっていました。同時に、医学分野では放射線治療が本格化し、科学分野では原子力の平和利用研究が世界的に推進されるなど、放射線を専門的に扱う研究者や技術者が急増した時代背景があったと考えられます。
このような状況下で、多くの研究者は放射線の影響を経験則や現象の記述だけでなく、科学的に厳密な理論で理解したいという強いニーズを持っていました。本書は、生物現象を物理学の数理モデルで解明しようとする画期的なアプローチを提供し、この学際的な領域に足を踏み入れた研究者たちにとって、待望の体系的な教科書として受け入れられたと推測されます。感情論や断片的な知識ではなく、定量的な「理論」を求める知的好奇心に応えたことが、発売当初の需要を喚起した大きな要因でしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?