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本書は、昭和64年に発生し未解決のまま時効が迫る少女誘拐殺人事件、通称「ロクヨン」を軸に描かれる警察小説です。物語の主人公は、捜査一課の刑事ではなく、D県警の広報官である三上義信。彼の視点から、時効成立を目前にした警察組織内部の権力闘争や複雑な人間模様、そして匿名発表を巡って激しく対立する地元記者クラブとの攻防が描かれます。さらに、家出した娘との関係に悩む一人の父親としての三上の個人的な葛藤も物語の重要な要素となっています。広報官という組織の代弁者としての立場と、元刑事としての矜持の間で揺れ動きながら、三上は「ロクヨン」の真相、そして組織が隠蔽しようとする真実に迫っていきます。
本作が2015年頃に文庫版として大きなヒットを記録した要因として、まず主人公設定の斬新さが挙げられると考えられます。従来の警察小説が捜査現場の刑事を主役とするのが定石であったのに対し、本作は「広報官」という、組織の論理と外部の圧力が交錯する役職を主人公に据えました。これにより、事件捜査のサスペンスに加え、「組織と個人」の葛藤という、多くのビジネスパーソンが共感できるテーマが鮮明に浮かび上がり、新たな読者層を獲得したと推察されます。
また、単なるミステリーに留まらない多層的な物語構造もヒットを後押ししたでしょう。時効が迫る未解決事件の謎、記者クラブとの手に汗握る交渉、警察内部の権力闘争、そして主人公の家庭問題という複数のドラマが緻密に絡み合い、読者を飽きさせない強力な求心力を生み出しました。2012年の単行本発売時から高い評価を得ており、満を持しての文庫化が、翌年の映画公開という話題性と相まって、販売部数を飛躍的に伸ばす起爆剤になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?

(2015年)