📬 ロングセラー通信
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本書は、ロシアの文豪レフ・トルストイが著した文学および芸術に関する評論・エッセイを収録した選集です。中心となるのは、彼の晩年の思想を代表する『芸術とは何か』などの著作と考えられます。トルストイは本書で、単に美を追求したり娯楽を提供したりするだけの芸術を厳しく批判します。そして、真の芸術とは、宗教的意識に基づき、国や階級を超えて人々を感情で結びつける「コミュニケーションの手段」でなければならないと主張します。自身の創作活動の根底にあった文学の目的、作家の社会的責任、そして芸術が人類に果たすべき役割についての哲学が、情熱的な筆致で語られています。
本書が発売された1936年頃の日本は、軍国主義が台頭し思想統制が強化されるなど、社会全体が不穏な空気に包まれていました。このような時代背景において、国内のイデオロギーから距離を置き、より普遍的な人間の生き方や精神性を問う西洋の古典思想への需要が高まっていたと考えられます。特にトルストイは、単なる小説家としてだけでなく、人道主義的な思想家としても世界的に知られた「巨人」でした。その世界的権威が、人生をかけて探求した「芸術とは何か」という根源的な問いに対する答えは、先行きの見えない時代の中で精神的な指針を求める知識層や文学青年たちにとって、大きな知的刺激となったことでしょう。さらに、岩波文庫という安価で入手しやすい形態で提供されたことも、当時の学生をはじめとする若い読者層に広く受け入れられる重要な要因になったと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?
