📬 ロングセラー通信
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本書は、フランスの精神分析家ジャック・ラカンの思想を解説する入門書です。ラカン派の精神分析家である著者が、自身の臨床経験を基に、難解とされるラカンの理論を平易な言葉で説明しています。「鏡像段階」「無意識は言語のように構造化されている」「現実界・象徴界・想像界」といった中心概念を、豊富な図解や身近な事例を用いて解説することに主眼が置かれています。専門用語の羅列を避け、ラカンの思考が現代を生きる私たちにとってどのような意味を持つのかを、具体的な語り口で解き明かすことを目指しています。読者がラカン思想の全体像を掴み、より専門的な研究へ進むための、最初の一歩として機能するように構成された一冊です。
本書が発売された2016年頃は、SNSの普及が成熟期に入り、他者の視線の中で自己のアイデンティティを確立することの困難さが社会的に意識され始めた時期と考えられます。このような背景から、自身の内面や欲望の構造を理解したいという知的なニーズが高まっていたと推察されます。従来のラカン入門書は、哲学や記号論の専門知識を前提とする学術的なものが大半でした。それに対し本書は、臨床家である著者が、悩みを持つ個人を明確な読者として想定し、語りかけるスタイルを取った点が画期的だったのではないでしょうか。難解な理論を「自分自身の問題」として捉え直させるこのアプローチが、これまでラカンを敬遠していた層に強く響き、専門書としては異例のヒットにつながったと考えられます。学術性とアクセシビリティを両立させた「翻訳」の見事さが、発売当初の読者を獲得した最大の要因と言えるでしょう。
では、なぜ売れ続けたのか?
