📬 ロングセラー通信
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本書は、思想家・渡辺京二の評論の中から「民衆」を主題とする重要な論考を精選したアンソロジーです。歴史の記述において、しばしば理想化されたり、一枚岩の集合体として語られたりする「民衆」という概念そのものに、鋭い問いを投げかけます。著者は、西南戦争、自由民権運動、水俣病といった近代日本の具体的な歴史事象を丹念に読み解き、そこに生きた人々の複雑で多面的な姿を浮き彫りにします。ロマンティックな民衆像を解体し、その内面に潜む欲望、非合理性、あるいは時代の状況に翻弄される姿をも描き出すことで、読者に対し「民衆とは何か」という根源的な問いを突きつける一冊です。
本書が発売された2011年10月は、東日本大震災から約半年が経過した時期にあたります。当時は、震災からの復興に向けて「絆」や「連帯」が社会的なキーワードとなり、市民運動やデモなどを通じて「民意」の力が改めて注目されるなど、共同体や民衆の力に対するロマンティックな期待が高まっていたと考えられます。多くの関連書籍が、いかにして連帯すべきか、社会をどう変えるかといった希望や実践を語る中で、本書は一線を画していました。熱を帯びた「民衆」賛美の風潮に対し、歴史的考察に基づいてその概念の危うさや欺瞞性を暴くという批評的なスタンスが、独自のポジションを築いたと推測されます。世の中の安易な一体感に違和感を覚えていた知識層や学生にとって、冷静な思考の足がかりを提供する本書は、まさに時宜を得た一冊として受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
