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本書は、現代詩の第一人者である吉増剛造の初期から1999年頃までの代表作を網羅した詩集です。1964年の第一詩集『出発』に収められた作品から、多行形式を特徴とする中期、そしてパフォーマンスや他メディアとの連携を深めていく後期の作品まで、その詩的スタイルの変遷を辿ることができます。本書は、単に活字で詩を読むという行為にとどまらず、言葉の音、リズム、そしてそれが喚起するイメージを通して、言語の根源的な力に触れる体験を提供するように編まれています。吉増剛造のラディカルな言語実験と思考の軌跡を凝縮した一冊であり、彼の広大な詩の世界への入門書として、またその核心に迫るための基本文献として位置づけられています。
本書が発売された1999年頃は、世紀末特有の閉塞感の中で、既成の価値観や表現への懐疑が広がっていた時代と考えられます。インターネットが普及し始め、情報環境が変化する中で、言葉の持つ力を根源から問い直すような先鋭的な表現が、一部の感度の高い読者に求められていた可能性があります。
吉増剛造は、この時期すでに現代詩の旗手として確固たる評価を築いていました。本書は、そのラディカルな詩業の全貌に触れることができる本格的なアンソロジーとして、長年のファンにとっては待望の一冊であり、また新規の読者にとっては最適な入門書として機能したと考えられます。
他の多くの詩集が静的な「読み物」としての性格が強いのに対し、吉増の詩は朗読パフォーマンスと不可分であり、そのダイナミズムがテクストに内包されています。この「読む」だけでは終わらない多層的な体験への期待感が、既存の文学に飽き足らない若い世代や、サブカルチャーに関心を持つ層を強く引きつけ、発売当初の支持につながったのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?

(1999年)