📬 ロングセラー通信
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主人公の女の子が、新しい赤い靴を履いて初めてお散歩に出かける様子を描いた絵本です。物語は、靴下を履き、お母さんに手伝ってもらいながら靴を履く場面から始まります。玄関を出て「きゅっ きゅっ きゅっ」と音を立てながら歩き始めると、犬や猫、あひるの親子と出会います。坂道を下る途中で転んでしまい、靴が片方脱げて泣いてしまいますが、最後はお母さんに抱きしめられ、靴を履き直して一緒に家に帰ります。子どもの日常にある「初めての体験」という小さな冒険と、それに伴う喜び、不安、そして親子の絆を、リズミカルな擬音語と共にシンプルに描いています。あくまで子どもの視点から、世界がどのように見えているかを追体験させる構成となっています。
本作が1986年当時に売れた理由は、子育て世代のニーズと絵本市場の変化を的確に捉えた、テーマ設定と表現手法の新規性にあったと考えられます。当時の赤ちゃん向け絵本は、動物を擬人化した物語や知育的な内容が主流でした。その中で本作は、等身大の人間の赤ちゃんを主人公に据え、「初めて靴を履いて歩く」という、どの子どもも経験する普遍的な成長の一コマを切り取っています。このリアルな日常への着眼点が、我が子の成長と重ね合わせたい親の強い共感を呼び起こしたと推察されます。また、核家族化が進み、親が子どもと密に関わる時間が増える中で、読み聞かせに適したリズミカルな擬音語と、林明子氏による子どもの細やかな表情や仕草を捉えた写実的で温かい絵柄は、他の様式化された絵本との明確な差別化要因となりました。絵本が情操教育ツールとして重視され始めた時代背景も追い風となり、多くの家庭に受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
