📬 ロングセラー通信
毎日1冊、10年売れ続ける本の秘密をお届け。
無料・いつでも解除可能

本書は、行動遺伝学の知見に基づき、人間の知能や性格、才能といったパーソナリティの形成に遺伝がどの程度影響を与えるかを解説する科学入門書です。双生児研究をはじめとする豊富な科学的エビデンスを用い、これまで一般的に「親の育て方」や「本人の努力」の結果とされてきた事柄の多くが、実は遺伝的要因に強く規定されているという事実を明らかにします。学力、創造性、精神疾患に至るまで、様々な人間の形質における遺伝と環境の寄与率を具体的な数値で提示し、読者が抱く「常識」をデータによって覆していく構成となっています。本書は単に遺伝の重要性を説くだけでなく、その科学的真実を踏まえた上で、私たちは個人として、また社会としてどう生きるべきかという根源的な問いを読者に投げかけます。
本書が発売された2016年当時は、「努力すれば報われる」という価値観が依然として根強い一方で、「格差社会」や「自己責任論」に対する疲弊感が社会に広がりつつあった時期と考えられます。このような時代背景の中、個人の成功や失敗の原因を「努力」や「環境」以外の要因、すなわち「遺伝」に求める本書の視点は、多くの読者にとって新鮮かつ衝撃的に映りました。特に、子育ての成果に悩む親や、自身の能力に限界を感じている人々にとって、うまくいかない原因を自分のせいだけではないとする科学的根拠は、一種の救いや免罪符として機能した可能性があります。また、同年には橘玲氏の『言ってはいけない』もベストセラーとなっており、「不都合な真実」を科学的データで解き明かすというジャンルへの関心が高まっていたことも、初期の売上を後押しした要因の一つと推測されます。キャッチーなタイトルも相まって、既存の教育論や自己啓発書に違和感を覚えていた層の心を強く掴んだと考えられます。
では、なぜ売れ続けたのか?