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『造形思考』は、20世紀を代表する画家パウル・クレーが、ドイツのデザイン学校バウハウスで行った講義ノートを編纂した書籍です。本書は、絵画やデザインにおける「かたち」がどのようにして生まれるのか、その根源的なプロセスを解明しようと試みます。内容は、点、線、面といった造形の基本要素から始まり、それらが運動やエネルギーを得て、いかにして生命感のある複雑な形態や空間を構築していくかを、クレー自身による多数の図版と共に論理的に探求していきます。単なる絵画の技法書ではなく、芸術家の創造的プロセスを、まるで自然科学のように法則性や普遍的な原理から捉えようとする思索の記録です。アーティストやデザイナーに限らず、あらゆる創造活動における思考の発生メカニズムに関心を持つ読者に、その核心を提示する一冊と言えます。
本書が発売された2016年頃は、ビジネス界で「デザイン思考」が広く浸透し始めた時期でした。問題解決のフレームワークとしてデザインプロセスを応用する考え方が注目を集める一方で、その手法論や形式化されたワークショップに対する一種の倦怠感も生まれ始めていたと考えられます。多くのビジネスパーソンやクリエイターが、より表層的でない、本質的な「創造性の源泉」を求めていたのではないでしょうか。そのような状況下で、『造形思考』は「How to(どう作るか)」を説く一般的なデザイン書とは一線を画していました。本書は、創造の根源にある「Why/What(なぜ形が生まれるのか)」を、パウル・クレーという巨匠の思考プロセスを通じて直接的に提示しました。抽象的で難解なテーマを扱いながらも、思考の軌跡を可視化する豊富な図版が、読者の知的好奇心を強く刺激したと推測されます。デザイン思考の次なる一手を探していた層にとって、本作は創造性の深淵を覗くための、またとない知的冒険の書として受け入れられたのではないでしょうか。
では、なぜ売れ続けたのか?
